この記事では「複勝率って結局どっちなの?」「2 連率と 3 連率の使い分けが分からない」という方のために、以下の内容をまとめています。
- 「複勝率」という言葉が抱える曖昧さの正体
- 2 連率 / 3 連率 / 勝率 の厳密な定義
- 30 戦サンプルでの計算例 (数字で見ると一目瞭然)
- 舟券種別ごとに見るべき指標
- BOATCRAFT が内部で採用する明示的な命名
- 初心者がやりがちな 5 つの間違い
第 1 回「AI予想とは何か」で触れた選手評価の話、 第 2 回「4モデルブレンドの設計思想」で出てきた特徴量の話を、 もう一歩実用寄りに掘り下げた回です。
なぜこの 3 つを混同するのか
競艇を始めて最初の壁が、選手データの読み方です。出走表を開くと 「勝率」「2 連率」「3 連率」 が並んでいる。 ところが解説記事を読みに行くと、今度は「複勝率」という別の単語が出てくる。これが混乱の入口です。
公式と一般メディアの呼び方が違う
boatrace.jp の公式出走表 は「2 連率」「3 連率」と表記します。一方で一般の予想記事やまとめサイトは 「複勝率」「連対率」といった呼び方を混在させがちです。意味が同じならまだしも、「複勝率 = 2 連率」と書く媒体 と 「複勝率 = 3 連率」と書く媒体 が両方存在するのが厄介な点です。
競馬用語の流入
競馬では「複勝」が「3 着以内」を指す舟券 (馬券) 種類として確立しているため、競馬畑の書き手が競艇記事を書くと 「複勝率 = 3 着以内に入る率 = 3 連率」 と書くことが多くなります。 逆に競艇プロパーの書き手は 「複勝率 = 2 連率」 として扱う場面もあり、結果として読み手は文脈で判断を迫られます。
「連対率」も曖昧
「連対率」も同じ問題を抱えています。本来「連対」は 2 着以内 を指す競馬用語で、転用されると 2 連率と等価です。 ただし一部の媒体では 3 着以内まで含めて「連対」と表現することがあり、結局のところ 「率」という言葉だけでは数字の意味が定まらない のが現状です。
だから「どの率か」を毎回確認する習慣が要ります。
3 つの指標の厳密な定義
混乱を避けるために、ここから先は boatrace.jp 公式 の表記基準に従って定義します。 「複勝率」という曖昧語は使わず、必ず「2 連率」「3 連率」のどちらかに展開します。
勝率 (1 着率)
出走数のうち 1 着になった割合。最も厳密で、最も達成しづらい指標です。 公式の「勝率」は単純な 1 着率ではなく 着順点に基づく加重平均 ですが、本記事では 議論を簡単にするため「勝率 ≒ 1 着率」として扱います。
2 連率 (連対率)
出走数のうち 1 着または 2 着に入った割合。つまり「1 着率 + 2 着率」と等価です。 2 連単 / 2 連複 の舟券を組み立てるときに最も直接効く指標です。
3 連率 (3 着内率)
出走数のうち 1 着または 2 着または 3 着に入った割合。「1 着率 + 2 着率 + 3 着率」と等価です。 3 連単 / 3 連複 の舟券で買い目を組むときに直接効きます。
「複勝率」の正体
ここで核心です。「複勝率」は媒体によって指す内容が変わる曖昧な言葉 で、boatrace.jp 公式の出走表では この語は採用されていません。実用上は次の 2 通りで解釈されます。
| 媒体タイプ | 「複勝率」が指す数字 | boatrace.jp 用語 |
|---|---|---|
| 競艇プロパー寄り | 1 着 + 2 着の率 | 2 連率 |
| 競馬流入・一般紙寄り | 1 着 + 2 着 + 3 着の率 | 3 連率 |
| 公式 (boatrace.jp) | 該当語なし | 2 連率 / 3 連率 と明示 |
解説記事で「複勝率 50% の選手」と書かれていたら、それは 2 連率 50% なのか 3 連率 50% なのかで 意味がまるで違います。前者なら超優秀、後者なら平均的、というレベルの差があります。
覚え方の図式
勝率 = P(1 着)
2 連率 = P(1 着) + P(2 着)
3 連率 = P(1 着) + P(2 着) + P(3 着)
複勝率 = ??? (媒体ごとに 2 連率 or 3 連率)
この図を脳裏に焼き付けておけば、「複勝率」という単語に遭遇したときに反射的に 「文脈はどっち?」 と確認できるようになります。
迷ったら公式表記に戻る。これが原則です。
計算式と具体例
数字に落とすと一気にイメージが湧きます。架空の選手 X が直近 30 走で次の成績を残したとしましょう。
| 着順 | 回数 | 30 走に対する割合 |
|---|---|---|
| 1 着 | 10 回 | 33.3% |
| 2 着 | 8 回 | 26.7% |
| 3 着 | 6 回 | 20.0% |
| 4 着以下 | 6 回 | 20.0% |
この選手 X の各指標を計算するとこうなります。
| 指標 | 計算式 | 結果 |
|---|---|---|
| 勝率 (1 着率) | 10 / 30 | 33.3% |
| 2 連率 | (10 + 8) / 30 | 60.0% |
| 3 連率 | (10 + 8 + 6) / 30 | 80.0% |
同じ選手なのに、見る指標が変わると 33.3% / 60.0% / 80.0% と数字の印象がまるで違うのが分かります。 ここで「この選手は複勝率 80% です」と書かれていれば、それは 3 連率の話。 「複勝率 60% です」と書かれていれば、それは 2 連率の話。 同じ「複勝率」という単語で、20 ポイントの差 が発生する余地があるわけです。
業界水準のざっくり目安
主要級別ごとの 2 連率 / 3 連率の典型的な範囲はおおよそ次の通りです (全国・全節通算)。
| 級別 | 勝率の典型 | 2 連率の典型 | 3 連率の典型 |
|---|---|---|---|
| A1 | 6.5 - 8.0 | 45 - 55% | 60 - 70% |
| A2 | 5.5 - 6.5 | 35 - 45% | 50 - 60% |
| B1 | 4.5 - 5.5 | 25 - 35% | 40 - 50% |
| B2 | 3.5 以下 | 15 - 25% | 25 - 35% |
この表を覚えておくと、選手データを見たときに「2 連率 40% の B1 選手 = 平均よりやや上」「3 連率 40% の B1 選手 = ほぼ平均」と 瞬時に位置づけ ができます。級別の詳細は 用語集 / 級別 も参照ください。
どの場面でどの指標を使うか
選手評価の基本は 「自分が買おうとしている舟券種類に対応した指標を見る」 ことです。 ここを取り違えると、見ている数字と買い目がチグハグになり予想が崩れます。
2 連単 / 2 連複 を組むとき → 2 連率を重視
2 連単 / 2 連複は 1-2 着の組み合わせ が当たる舟券です。3 着の情報は買い目に含まれません。 したがって、軸選手・相手選手を絞るときは 2 連率 が最も直接的な指標になります。 3 連率を見ても良いのですが、3 着までの情報が混ざる分だけ「2 着以内に来る力」を測る精度は落ちます。
3 連単 / 3 連複 を組むとき → 3 連率を重視
3 連単 / 3 連複は 3 着までの組み合わせ が問われる舟券です。3 着でも当たれば配当が発生する以上、 3 着まで含めた評価指標である 3 連率 を見るのが理にかなっています。 特に 3 連複 BOX や 3 連単フォーメーション のように手広く買う買い目を組むときは、 3 連率の高い艇を組み込むことで的中の安定性が増します。
「1 コースの 1 着率」を会場特性で見るとき → 勝率 (1 着率)
会場ごとに「1 コースが何 % 1 着になるか」を比較するときは、純粋な 1 着率 (勝率) を使います。 2 連率や 3 連率を使うと「1 コースの選手が 2 着 / 3 着に流れた率」も混ざってしまい、 会場固有の 1 コース優位性 を測れません。会場別の 1 コース勝率は 会場ガイド および 用語集 / 1 コース 1 着率 で個別に確認できます。
軸選手を絞るとき → 「2 連率と 3 連率の差」も見る
実は 「3 連率 − 2 連率」 という値も参考になります。これは 3 着になる率 に相当する数字で、 この値が極端に大きい選手は「2 着には入れないが 3 着には粘り込む」タイプ、 逆に値が小さい選手は「2 着以内か 4 着以下しかない、極端な選手」というプロファイリングができます。 3 連単で 3 着付け候補を探す ときに地味に効く視点です。
超優秀ラインの目安
| 指標 | 「優秀」ライン | 「超優秀」ライン |
|---|---|---|
| 勝率 (加重) | 6.5 以上 | 8.0 以上 |
| 2 連率 | 35% 以上 | 40% 超 |
| 3 連率 | 45% 以上 | 50% 超 |
ここを揃えるだけで予想の見え方が変わります。
BOATCRAFT モデルでの扱い
BOATCRAFT の予測エンジンは、第 2 回で解説した 4 つの機械学習モデル (LightGBM / XGBoost / CatBoost / NN) と、 第 3 回で解説した 統計モデル (ベイズ + 階層モデル + ロジスティック回帰) を組み合わせるハイブリッド構成です。 これら 5 種類のモデルすべてで、勝率 / 2 連率 / 3 連率は別個の特徴量 として学習に使われています。
内部命名の明示分離
BOATCRAFT 内部のコードでは、「複勝率」という曖昧語は 一切使いません。代わりに次のように厳密に命名します。
| BOATCRAFT 内部の名称 | 意味 | boatrace.jp 用語 |
|---|---|---|
win_rate |
1 着率 | 勝率 |
top2_rate |
1 着 + 2 着の率 | 2 連率 |
top3_rate |
1 着 + 2 着 + 3 着の率 | 3 連率 |
この命名規約のおかげで、開発時に 「あれ、ここって 2 連率と 3 連率どっち想定だっけ」 と迷う事故が起きません。 アプリ UI 側の表示も同じ規約で揃えており、ユーザーが見る画面に「複勝率」という曖昧表記は出てきません。
つまみによる重み付けの自由度
Standard / Pro プランで開放される追加つまみの中には、2 連率重視 / 3 連率重視 を切り替える設計があります。 2 連単中心に買う方は 2 連率の重みを上げ、3 連単中心の方は 3 連率の重みを上げる、という直感的な操作が可能です。 用語の対応は 用語集 / 2 連率 および 用語集 / 3 連率 でいつでも参照できます。
よくある間違い 5 つ
指標の使い分けでつまずきがちなパターンを 5 つ整理しました。1 つでも心当たりがある場合は、評価の前提を見直す価値があります。
これが選手評価の最低条件です。
まとめ
長くなりましたが、ポイントを 5 つに整理します。
- 「複勝率」は曖昧語。媒体によって 2 連率を指すか 3 連率を指すかが違うので、必ず文脈で確認する。
- boatrace.jp 公式の表記基準 に従い、勝率 / 2 連率 / 3 連率 の 3 つで会話するのが最も誤解が少ない。
- 舟券種別と指標は一対一。2 連単/2 連複なら 2 連率、3 連単/3 連複なら 3 連率を主軸に見る。
- 級別だけで決め打ちしない。当地成績・直近 10 走・今節成績を組み合わせ、時間スケール違いを併用する。
- BOATCRAFT は内部で
win_rate/top2_rate/top3_rateを明示分離。UI も含めて曖昧語を排除している。
指標を正しく使い分けるだけで、同じ出走表でも見える景色が大きく変わります。次回コラム以降では、 23 つまみの設計思想 および 当地 / 全国データの組み合わせ方 を順に解説していく予定です。